オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『誰のせいでもない』

Every Thing Will Be Fine, 118min

監督:ヴィム・ヴェンダース 出演:ジェームズ・フランコレイチェル・マクアダムス

★★

概要

書けない小説家が少年を轢き殺したら書けるようになる話。

あらすじ

執筆不調の小説家が雪道で少年を轢き殺してしまう。彼は悩んで、なんちゃって自殺未遂なんかもしちゃうけれど、事故を乗り越えて小説家として成功するというヴィム・ヴェンダース監督作品。

感想

最後まで主人公トマス(ジェームズ・フランコ)のキャラクターが掴めなかった。事故の罪悪感に蓋をするために他人事のように振る舞っているところがあるのか、生来の人間性なのか。そんな感じで一事が万事「説明はしないから読み取ってね」系の映画で、トマスだけでなく、息子を失った母ケイト(シャルロット・ゲンズブール)や恋人のサラ(レイチェル・マクアダムス)、そして無事だった方の少年クリストファーの心情的な核心が伝わってこなかった。

事故後のトマスの小説家としての成功は、事故という経験を消化して創作の糧にできたからだろう。小説家というものは何だってネタにできるのである。悲痛な経験であるほど、それが物語として昇華した際に読者を惹き付けても不思議はない。彼は小説家であったために事故を糧に変えられたが、他の人はそうではない。クリストファーの言う通り不公平である。“Every Thing Will Be Fine”はトマスにとってだけの話であって、他の人はどうでもよいのかと文句の一つくらいは言いたくなる。

「2年後……」「4年後……」といった具合に時間の経過した場面転換があり、その間に起きたことは、読み取れる部分もあれば想像するしかない部分もある。しかし、トマスの創作過程もその空白に埋められてしまっているために、“何とかなる”過程が分からない。描くべきはそこではないのか。何とかなったところだけを描いて、後は想像してねというのは不親切というよりも脚本上の逃げに思える。

とても健気なのに酷い仕打ちを受けるレイチェル・マクアダムスが可哀想だった。ブロンドヘアの似合う彼女だが、暗い髪色も良い。

3D映画として製作されたそうである。この辺りは3Dだと奥行きを感じられるのかなという演出はあるものの、迫力を求めるような話ではないし、ドラマ的にどのような意味があるのかはよく分からない。心の奥行きを表現するためだとしても、心の底にまで切り込んでいるとは思えない。

原題が“Everything”ではなく“Every Thing”とスペースを挿入しているのはどういった意図だろう。