オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ある戦争』

Krigen(A War), 115min

監督:トビアス・リンホルム 出演:ピルウ・アスベック、ソーレン・マリン

★★★★

概要

アフガンの治安維持に派遣されたデンマーク部隊の話。

短評

アフガニスタン紛争をアメリカ以外の視点から見るというのが新鮮である。今後、日本の自衛隊がこのような事態に直面することもあるのだろうし、南スーダンで事実上の戦闘が行われたことを考えると既に起こっている出来事なのかもしれない。とても他人事とは思えない内容だった。

あらすじ

アフガンに駐留していたデンマークの部隊がタリバンの攻撃に晒され、指揮官のクラウスは敵の存在を確認できないまま空爆の支援を要請する。空爆によって民間人に犠牲が出たことが明らかとなり、クラウスは法廷に立たされる。

感想

映画の冒頭、地雷を踏んだ兵士が死亡する。兵士たちの不満が募り、部隊の士気は低下する。対テロ戦争の直接の当事者ではない第三国が当事者となる難しさが描かれる。彼らは「タリバンをぶっ壊す!出てこいビンラディン!」と意気揚々乗り込んだわけではない。彼らの任務である治安維持は、治安を乱す者を鎮圧することに他ならず、そこには当然戦闘が発生する。戦闘があれば、兵士は生きるか死ぬかの極限の状況での判断を迫られる。

それが件の航空支援要請である。本来は敵の姿と場所を確認しなければ空爆はできない。しかし、部隊に負傷者も出て、このままでは全滅しかねないという状況でのやむを得ない判断として、“敵の確認の無視”が行われる。

クラウスは民間人の被害に対する責を問われる。上述の“このままではヤバい”という状況を見ていれば理不尽な告訴にも思えるが、法律上は彼に責任がある。

クラウスに感情移入していると、法廷で彼を追い詰める検察(字幕は法務官)が実に怖ろしく見える。彼女は職務上の責任と正義感に乗っ取った行動をしているだけなのかもしれないが、彼女の言い分を聞いているとクラウスがとても悪い男のように思える。おそらく彼女が派兵に反対する人々を投影した存在でもあるためだろう。クラウスの判断を糾弾することで派兵に伴うリスクそのものへ疑問を投げ掛けている。

最終的にクラウスは、部下の「銃口の光を見たよ」という偽証により無罪を勝ち取る。彼に責任を負わせるのは酷だと視点に立っていればハッピーエンドにも思えるし、彼の家族を描くことで同情を誘うような作りにもなっている。それでもなお胸のモヤモヤが消えない。彼の判断により民間人に犠牲が出たのは事実である。それを「部隊を守るために仕方がなかった」で済ませてよいのか。

彼が有罪になっていれば、それはそれで理不尽に感じただろう。クラウスの判断にも、法廷の判決にも、正しい答えが存在しない。戦争に参加する以上、そのような事態が起こりうるし、実際に起きているのだろう。そして、それは我々にとっても他人事ではなくなるのである。無関係な他人事であると思えたこれまでがどれほど恵まれた時代であったのかを痛感する。