オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『フローズン』

Frozen, 93min

監督:アダム・グリーン 出演:エマ・ベルショーン・アシュモア

★★★

概要

スキー場のリフトに取り残される話。

短評

梅雨が明けて一気に暑くなったので、映画を観て涼しくなろう。背筋が凍るほど怖いホラー映画に出会うことは難しいし、酷い出来の映画を観て寒々しい気分になるのはサメ映画で事足りている。ここは一つ見ているだけで涼しくなれそうな寒い場所を舞台にした映画にしよう。そこでその名も『フローズン』。こいつは寒そうである。雪の誰かさんと紛らわしいタイトルだが、こちらの方が早い。

あらすじ

登場人物は三人。パーカーとダンのカップルに、ダンの親友ジョー。これではジョーがお邪魔虫のようだが、ダンとジョーの恒例行事にパーカーが参加した形である。彼らが営業終了ギリギリのリフトに無理を言って乗せてもらうと、係員がもう降りたものと勘違いして機械を止めてしまう。次の営業日は一週間後である。

感想

このような事態に直面したときにどうすべきか。まずはリフト降り場で何かあったのだろうと考えて待つ。リフトが止まるのはよくあることらしい。しかし、照明が消えて、そうではないことが判明する。ここで余裕が消失する。

となると次はどうするか。とりあえず待つ。下手に動くよりも助けが来るのを待つ方が良い。しかし、リフトに残された彼らを吹雪が襲う。吹雪が止むとパーカーが顔に凍傷を起こしている。愛しの恋人が凍傷とあらば、ザック・エフロンクリスティアーノ・ロナウドを足して二で割ったようなイケメン彼氏は黙って待っていられない。リフトから決死の飛び降りを決めると、脚がバキッと豪快に折れる。それはもう豪快な折れ方で、骨が皮膚を突き破っている。身動きの取れなくなったダンは狼たちが美味しくいただきました。

このような感じで、どうすればよいかと考えたことが一つ一つ潰されていく。待つ、飛び降りる、ケーブルを伝って移動するといった観客の考えそうなことが、「ダメだよ、それじゃ助からないよ」と否定されていく。自分ならこうしてこの窮地を切り抜けるぞという余地を残してくれないと、怖くてスキー場に行けなくなってしまう。元から行くつもりもないけれど。

そこで改めてどうすべきだったか考えてみたい。飛ぶことは却下である。三十郎氏にスーパーヒーロー着地は決められない。ケーブル伝う路線が現実的だが、本作ではケーブルが冷たすぎて手袋が破れてしまう。そこまで冷たくなくても、防寒用の手袋をしていると上手く握力が伝わらないだろう。足をかけてケーブルを伝うのがよさそうだが、ジョーには腹筋が足りなかったらしい。スノーボードをケーブルに掛けて滑らせるというのも良さそうな気がするが、バランスが崩れると危ないし、勢いがつきすぎて飛んでいってしまうかもしれない。そうなるとダンよろしく美味しくいただかれることになる。

結局のところ、生存者に学ぶしかないのである。本作の生存者パーカーは何をしたか。何もしなかった。おしっこを漏らし、リフトに手が張り付くという悲劇には見舞われたが、何もしないで待っていたら運が味方して助かったのである。動かないのが正解というソリッド・シチュエーション・スリラーのどんでん返しにありがちなオチを、どんでん返しではない形で使用している。

リフトに取り残されたときはとにかく待つことである。自分がヒーローになることはない。他の人がヒーローになるようにけしかけるべきである。三十郎氏が美女であれば、何も言わずとも阿呆な男たちが勝手にヒーローになろうとしてくれるだろうが、三十郎氏はおっさんである。「自分には体力的問題で無理だが君ならできる!」という大嘘をもっともらしく言えるスキルを習得しておきたいものである。

ところで、冒頭の“映画を観て涼しくなる”という目的は達成されたのか。クーラーをつけてアイスクリームを食べているので、元より映画に関係なく涼しいのである。気分を冷ますよりも、気温を下げる方がよい。合理的に考えて行動せねば、雪山で生き残ることはできない。