オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『オデッセイ』

The Martian, 141min

監督:リドリー・スコット 出演:マット・デイモンジェシカ・チャステイン

★★★★★

概要

火星でジャガイモを栽培する話。

短評

火星でサバイブするためには何が必要か。不屈の闘志、広範な知識、そしてダクトテープである。

感想

火星に一人置き去りにされる。どう考えても死ぬ。絶望である。しかし、マーク・ワトニー(マット・デイモン)は決して諦めない。途方もなく大きな問題を前にして絶望するのではなく、問題を小さく分割して、一つ、また一つと解決していく。専門の植物学を筆頭とした知識もさることながら、小分けして取り組むべき問題を見極める能力が抜群である。三十郎氏が彼よりも勝っている部分があるとすれば、ケチャップを無駄遣いしないことくらいだろう。

火星に残されたのはワトニー一人なので、問答無用で彼に感情移入させられる。マット・デイモンは何を演じさせても上手い俳優だと思うが、比類なき知性や明るい性格に加え、親しみやすさというワトニーのキャラクターの根幹が抜群にハマっている。マーク・ワトニーはマット・デイモン以外にはありえない。

ワトニーが挫けることなく試練に立ち向かっていくものだから状況の過酷さを忘れてしまいそうになるが、痩せ衰えた身体を見ればその壮絶さが一目瞭然である。傍目には辛さを感じさせないくらいのメンタルの強さがなければ、とても耐えられないのだろう。劇中で何度か訪れる致命的な危機に感情を爆発させることもあるが、その度に次の対応をとる。本当に見上げた男である。

とにかく何度も感動させられる映画である。“I'm not gonna die.”と決意するワトニーに感動し、ジャガイモの芽吹きに感動し、ワトニーの生存確認に感動し、通信が繋がると感動し、マルティネス(マイケル・ペーニャ)とのやり取りに感動し、中国の協力に感動し、イエスと即答するクルーに感動し、火星最後の食事に感動する。その度に目頭を熱くしながら「いいぞいいぞ、頑張れ頑張れ」と応援する。ルイス船長(ジェシカ・チャステイン)がワトニーをキャッチしたときには、感動を通り超えて渾身のガッツポーズである。

本作に大変感銘を受けた三十郎氏は原作の『火星の人』も読んだ。原作では、例えば人糞から肥料を作る際のリンがどうのこうのとか、雨を降らせるときの化学式が云々とか、プルトニウムから熱を得る方法なんかが詳細に書いてあって、少し賢くなった気分になれる(無論阿呆のままである)。映画ではその辺りの描写や長期に渡る移動シーンは端折って、とてもテンポの良い仕上がりになっている。ちなみに、あとがきに書いてあったと思うのだが、そもそも火星では冒頭のような嵐は発生しないのだとか。

本作の撮影はヨルダンのワディ・ラムで行われたそうである。『プロメテウス』でも使用されたリドリー・スコットお気に入りのロケ地である。色合いを変えるだけで、火星になったり未知の惑星のなったりする。全く疑念をを抱かせないのだから、三十郎氏を騙すの容易い。火星の重力は地球よりも弱いが、映画的には苦労しているように見えた方が良いだろうとのことで地球の重力そのままで撮影されている。

余談だが、本作は三十郎氏が初めて海外で観た映画である。インド一周の旅からの戦略的撤退を決めた三十郎氏は、直接帰国するのも気が進まずバンコクに立ち寄った。一度訪れたことのあるバンコクで疲れを癒やしたかったのである。インドで失った体重を魅惑のタイ料理で順調に取り戻す三十郎氏であったが、主だった観光スポットは訪問済みのため特にすることがない。そこで映画館である。

バンコクの映画館は、日本よりも料金が安く、綺麗で大きかった。バンコクが先進的な都市であることは分かっていたものの、改めて感心したものである。

三十郎氏は英語が得意とは言えない。なんとか読むことはできても、聞き取りは苦手である。そんな男が日本語字幕なしで本作を観ても、内容がよく分かるのである。映画というのは映像言語で構成されていて、言葉が分からずとも楽しめるものなのだと実感できた。映像を見れば何が起きているのか分かるので、それに付随する台詞も何を言っているのか分かりやすくなる。相乗効果である。これが会話劇であれば、こう上手くはいかなかっただろう。

本作に出会って以来、三十郎氏は『テラフォーマーズ』以外のテラフォーミングものを求め続けているのだが、望むものは見つかっていない。

今日の覚えておきたい台詞は、“You have terrible taste in music.”。ofじゃなくてinなのか。

最後に、本作を観たり思い出したりすると聞きたくなるこの曲を貼っておこう。

オデッセイ(字幕版)

オデッセイ(字幕版)

 
火星の人

火星の人