オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ガン・ホー』

Gung Ho, 112min

監督:ロン・ハワード 出演:マイケル・キートンジョン・タトゥーロ

★★★

概要

アメリカの田舎町に日本の自動車メーカーを誘致する話。

短評

本作で描かれている飛ぶ鳥を落とす勢いの日本経済は今は昔となったが、揶揄されている日本企業の文化はむしろ現代の日本人が納得してしまうところがあるというのが、なんとも示唆的なコメディ映画。ロン・ハワード監督作品である。

あらすじ

住人の雇用を支えてきた自動車工場が閉鎖され活気を失うアメリカの田舎町。起死回生の一手として誘致されたのが日本の圧惨自動車である。これで万事順調……とは当然ならず、日本とアメリカの文化が対立する。

感想

歓迎のレッドカーペットで靴を脱ぎ、川で集団行水をする日本人の描写は極端かもしれないが、アメリカの従業員が戸惑う朝の準備運動や、昼休みに急いでカップ麺をかき込む日本人、家族よりも仕事を優先しろという圧力、会社のための無償労働などは現代の日本も変わらない。大声でひたすら叫ぶ研修なんてギャグだったはずなのに、現実に存在することが分かってしまったのだから笑えない。ステレオタイプな描写をされていることに怒る人もいるのだろうが、バカにされるような悪しき風習が改善されていないことにこそ怒るべきであると三十郎氏は考える。当の日本人ですら理解不能な日本文化がたくさんあるのだから、外国人の目に奇妙に映るのも無理はない。

面白いのは、それら“日本流”のやり方を、この時代の日本人が正しいと信じていることである。終身雇用が崩壊を迎えようとしている現代の日本では、会社への絶対的な忠誠心が珍しいものになってきた。労働時間は変わらないのに、経済的安定を失い、その上信じられるものもない現代人よりも、バブル期の企業戦士たちは精神的に恵まれていたのかもしれない。だからと言って何かを妄信して救いを求めるのがよいとも思わない。

日米の文化の違いで興味深かったのは、あくまで“欠陥ゼロ”というドグマに拘泥する日本人に対し、アメリカ人は「欠陥が出るのは仕方ないから、販売店に尻拭いさせればいい」と主張するもの。合理的なのか大らかなのか。他には、小便の飛距離を競うアメリカ人に対し、「我々は的を狙う」と主張する日本人が笑えた。アメリカの小便器には的や芳香剤のボールはないのかな。

合理的・個人主義アメリカ人、集団主義の日本人というステレオタイプがある。本作も基本的にはそのステレオタイプに従っているのだが、そればかりではない。ハリウッド映画にはよく演説のシーンがある。抜群に上手い演説を見せる。聴衆はものの見事にノセられて、集団として一致団結する。本作も同じである。どうやって人をまとめるかという過程に技術的な差異があるだけで、人は大きく違わないのではないか。アメリカの労働者だって、今は本作ほど牧歌的でもないのだろう。

ガン・ホー (字幕版)

ガン・ホー (字幕版)