オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ワンダーストラック』

Wonderstruck, 115min

監督:トッド・ヘインズ 出演:ジュリアン・ムーアミシェル・ウィリアムズ

★★★

概要

家出少女の物語と家出少年の物語。

あらすじ

1927年と1977年の時を隔てた二つの物語が並行して進む映画である。1927年の主人公は母を知らない聾者の女の子。1977年の主人公は父を知らない聾者となる男の子。これは映画なので当然この二人の間には何か繋がりがあるわけで。それ自体に驚きはないものの、穏やかに心温まるお話である。二人の人生が交差する舞台が博物館なんていうのは、なんとも素敵ではありませんか。

感想

聾者であるローズの物語はサイレント映画として構成されている。ヒッチコックが「映画はサイレントの時代に既に完成されている」なんてことを言っていたけれど、台詞がなくともちゃんと伝わるものである。動きや表情、ほんの少しの文字情報が、状況や感情を雄弁に語ってくれる。

一方で、聾者となったばかりのベンの物語は映像が雄弁に語るばかりではない。聾者として生きているローズとは異なり、ベンにとって聞こえない世界は戸惑いの連続である。音を発さない人の口の動きに思わず目が行ったり、自分の声の大きさが分からないので大声を出してしまったり。

二人の冒険は決してワクワクするものではない。二人とも居場所をなくして逃げ出すという暗い始まりなのである。観客にとっても楽しいものではない。だからこそ、最後の出会いがドブの中から見上げた星ということになるのだろう。

一人二役を務めるジュリアン・ムーアがとっても素敵なお婆さんになっている。老けメイクをを施された彼女の表情は穏やかで優しく、濃いメイクで若々しさを強調しているときよりも魅力的に映る。

本作のように二つの時代を描き分けたり、現代とは異なる過去の時代を描くときの違和感のなさがハリウッドの凄いところである。その時代を実際には知らないということもあるのだろうが、ファッション一つとっても着せられている感じがしない。こなれているのである。妙に小奇麗な衣装らしい衣装だと、その世界に連れて行ってくれない。

ワンダーストラック (字幕版)