オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ありあまるごちそう』

We Feed the World, 95min

監督:エルヴィン・ヴァーゲンホーファー

★★

概要

食品生産の工業化と貧困のドキュメンタリー。

短評

世界の飢餓の原因を工業化に求めたドキュメンタリー。指摘自体は興味深いものだが、批判の仕方は的はずれのように思う。

あらすじ

この世界には全ての人を養うことができるだけの食料があります。しかし、それらは大量に廃棄され、必要なところに行き渡っていません。飢餓は構造的な殺人です。

感想

ある漁師は語る「EUができてから科学者がやって来て漁獲量や獲った場所を管理するようになった。彼らは我々の稼ぎを分析している」。ある農家は語る「交配種よりも在来種の方が美味い。でも消費者が見た目の良い交配種を選ぶ」。あるブラジル人は語る「アマゾンが開拓され、土壌が人工的に変えられてしまった。本来は大豆向きの土地ではないのに」。

こうした映像を見せられると、語り手に同情し、何やら大企業が悪いことをしているように感じる。しかし、彼らの主張は一様に「昔と違う」というものであり、具体的なデータを示して何が駄目なのかを提示していない。彼らの知る「昔」だって、人間が自然に手を加えてきたことには変わりないはずである。調査を基にした漁獲制限なしに漁師に任せるのは無責任だし、交配種だって美味しくて見た目も良いものを開発すべきである。

アフリカやブラジルの貧困層の生活、機械的に処理されていくブロイラーの映像は確かにショッキングである(ベルトコンベアの上でもがくブロイラーの奥に吊るされた鶏肉が映っている構図は抜群)。しかし、それらの原因は直接企業に求められるべきだろうか。

「食品生産の工業化」と「飢餓」の間には「産業構造の転換」や「富の再分配」といった媒介変数が存在する。それらをすっ飛ばして大企業のやり方が悪いと主張しても説得力がない。昔のやり方全て正しいとは思わないし、効率性や利便性を捨てて元に戻すべきではないと思う。もちろん大企業のやり方が正しいとも思わない。しかし、それに伴う弊害に対処するのは政府の責任である。その点で政府と大企業の関係を叩いた『フード・インク』の方が出来が良い。

最後にネスレのCEOを登場されて「大企業は利益追求以外には何も考えてませんよ」と印象づけるのは構わないが、それに歯止めをかけられるのは企業の良心ではない。

ありあまるごちそう (字幕版)