オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『アンチヴァイラル』

Antiviral, 107min

監督:ブランドン・クローネンバーグ 出演:ケイレブ・ランドリー・ジョーンズサラ・ガドン

★★★

概要

有名人が感染したウイルスを売買する話。

あらすじ

例えばサラ・ガドンが何か病気に罹患したとする。彼女の血液や患部からウイルスを抽出し培養する。何故そんなことをするかと言えば、それを欲しがるファンがいるからである。「彼女と同じ病気になりたい!それも同じウイルスで!」。なんと倒錯的な趣味かとドン引きして然るべきだが、倒錯的でないとされるファンの行動、例えばサインを貰ったり握手したりして喜ぶことにだって何の意味があるだろう。有名人と同じものを食べてみたり、同じ化粧品を使ってみたり。三十郎氏が「森見登美彦をつくった100作」のリストを追いかけているのだって、人によっては倒錯的に見えるだろう。根本的には同じ行為である。

感想

売買されるのはウイルスだけではない。「セレブの細胞入り肉」が培養され販売されている。人々はそれを買うために列をなし、レストランでは「本日のスペシャリテサラ・ガドンです」と本人の顔写真を並べたテーブルに運ばれる。この世界の日本では、大人の玩具にこの技術が応用されているに違いない。

奇抜な発想のある映画は往々にして設定が面白いだけになりがちである。本作もそんなヘンテコSFになっていてもおかしくないが、「自分に感染させて盗んだ謎のウイルスが致死性だったどうしよう」というサスペンスに仕立てることで物語としての面白さを担保している。

ケイレブ・ランドリー・ジョーンズが定職に就いているのは珍しい。普通の人を演じている映画もあるのに、どうしたことか彼にはホワイト・トラッシュのイメージがある。と言っても、職務上の立場を悪用した小遣い稼ぎからトラブルに巻き込まれる役なので、まともな男ではない。病により衰弱していく姿が禁断症状を起こした薬物中毒者に見えなくもない。やはり彼はホワイト・トラッシュの人である。

監督はデヴィッド・クローネンバーグの息子ブランドン・クローネンバーグ。本作が長編デビュー作である。父親仕込みのグロ描写が各所に見られる。ホラー的な需要を満たすためのグロではなく、人間のグロテスクな欲望を表現するグロである。