オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『アベンジャーズ/エンドゲーム』

Avengers: Endgame, 181min

監督:ルッソ兄弟 出演:ロバート・ダウニー・Jrクリス・エヴァンス

★★★

概要

アベンジャーズがサノスと戦う話。

短評

三時間超えの超大作である。戦いの相手があくまで宇宙的規模のゴリラ男サノスであることを踏まえ、ニョウイとかいう極悪ヴィランと死闘を演じずに済むよう、前日の夜から水分摂取とネット接続を控え、当日も唇を濡らす程度の最小限に留めた。幸いにも当日の朝は快便。ベンイなるヴィランは心配ない。上映開始五分前に最後の一滴を絞り出し、戦いの準備はここに整った。

感想

「濃密な内容で三時間はあっという間」。そう言いたかったが、正直序盤は退屈である。トニーの地球への帰還は一つの注目ポイントだったが、キャプテン・マーベルがあっさりと美味しいところをもっていく。「サノスの居場所の情報はないか」「うるさい、お前は何やってたんだ」とトニーとキャップを喧嘩させておきながら、ネビュラが「私、知ってるわよ」と後で言い出したりして会話も破綻している。ハルクに会いに行った際のスコットのギャグも滑っている。ホークアイの闇落ちも必然性を感じない。日本語も酷い。

話が徐々に面白くなるのは、本作のMVPネズミくんがスコットを量子世界から連れ戻して石集めを始めてから。過去のMCU映画の世界へ移動する演出は、正に集大成といった感があってよい。一方でタイムトラベルという手段は、何でもありになってしまうのであまり好きではない。過去を変えるのではなく、過去の世界から石だけを移動させることで歴史改変という矛盾をなくし、サノスと最終決戦できる舞台を整えたのは分かる。しかし、世界が一本の線で繋がっているのなら、現ネビュラが過去ネビュラを殺すと現ネビュラは存在しないはずだし、世界線が分岐するのなら、石を集めてきたことで新たに失敗世界線を創り出したことになる。

この辺りは色々と考察が加えられるのだろうが、初見の観客を力技で納得させられるレベルではなかったように思う。逆のパターンで、初見ではすんなり納得できるが考察すると矛盾があるという方が映画的には良い。過去改変により現在に影響が生じるのであれば、トニーはサノス事件後に生まれた娘と消えた人々を天秤にかけることになり、(どちらを選んでも悲しい結末にしかならない)ドラマが生まれたはずである。

本題の最終決戦である。これを見たいがために、ここまで見続けていたと言っても過言ではない。特にキャップの「アベンジャーズ、アッセンブル」である。ここだけは劇場全体が「うぉおおおお!!!」と絶頂する一体感を味わえるに違いない。大規模戦闘は既に『インフィニティ・ウォー』でも見たので目新しさはないが、キャップが遂にムジョムジョを扱って、ようやく人外並みの活躍を見せてくれるのが嬉しい。ここでもキャプテン・マーベルが美味しいところを持っていくので、彼女が指パッチンすれば誰も死なずに済んだのではないかと思う。ハルクを筆頭に見せ場のないヒーローも多いが、引退するベテランに花を持たせねばなるまい。

エピローグも少々長いが、集大成なので仕方ない。『王の帰還』のエピローグはもっと長かった。キャップやソーの「あるべき自分よりもありのままの自分になる」という選択はどうなのだろう。「ヒーローなんだから死ぬまで戦い続けろ」と言うつもりはないが、「十分頑張ったしもういいでしょ」では「自己を犠牲にして他者を助ける」というそれまでのヒーロー的精神には真っ向から対立する。キャップを引退させたいがための強引な展開に思えた。

特に笑えるシーンが二つ。一つは、引きこもりデブと化したソー。彼の登場シーンで最も笑った。最後までデブのままなのも笑える。もう一つは、ホークアイとブラック・ウィドウのソウルストーン獲得のための壮絶な譲り合い。映画がバートン一家の消失から始まるので、彼と家族の再会シーンは必ず描かれるはずである。従ってブラック・ウィドウが死ぬしかないのだが、その過程はコントである。そもそも彼らは愛し合っていないだろう。

決定的に気に食わなかったのはサノスの扱いである。『インフィニティ・ウォー』では、サノスにはサノスの言い分があった。それが本作では、殺戮を楽しもうとする単なる悪役である。前作のような絶望的な強さもない。

正直に言えば期待外れである。それが言い過ぎだとしても、『インフィニティ・ウォー』で高まった期待に完璧に応えてくれる出来ではなかったように思う。シリーズのファンに向けたサービスシーンは楽しいが、一本の映画としての完成度は必ずしも高くない。一年間待った甲斐があるというほどではない。

以下小ネタ。葬儀の参列者のなかに見覚えのない青年(少年?)が混じっていたのだが、何者だろう。シュリの登場シーンでシルエットが細長すぎて、エイリアンが出てきたのかと思った。キャプテン・マーベルの髪は長い方が良い。エンドクレジットの終わりに鉄を打つような音が鳴る。追悼なのか誰か新しい人がアイアンマンになる伏線なのか。入場者特典はハルクだった。

 

*追記

コメントを受けてタイムトラベルについて再考。

映画の世界を世界線Aとして、タイムトラベルした先の一見自分たちの過去に見える過去の世界は、ニューヨークが世界線B、アスガルド世界線C、ヴォーミアが世界線D、モラグが世界線Eと、本来はそれぞれが交わらない平行な世界ということになる。従って、世界線Eから世界線Aにやって来たネビュラEをネビュラAが殺しても、世界線Aにおいてタイムパラドックスは生じない。且つ、サノスAは既に冒頭で倒しておりサノスEも消滅したので、世界線Aの生命が再びサノスに消滅させられることはない(別の世界線のサノスがわざわざ世界線Aにやって来る場合は除く)。

世界線Aにストーンを集めたままだと残りの世界線が失敗ルートに分岐してしまうので、エンシェント・ワンとハルクの約束通り、キャップが返却ツアーへ。返却ツアーの完了により、それぞれの世界線におけるストーン不在の弊害を取り除ける。

 

*追記2

平行世界説を採用する場合、サノスEは何故世界線Aにやって来たのか。アベンジャーズAに念願の成就を帳消しにされるのはサノスAであってサノスEではない。サノスが滅ぼすべきはアベンジャーズAではなくアベンジャーズEということになる。わざわざやって来て消されてしまったサノスEは阿呆である。この点については二つの考え方ができる。

一つは、持ち去られた石を追ってきたというもの。サノスEは石返却ツアーが予定されていることなど知らない。しかし、とりわけそのような動機は描かれていなかったように思う。もう一つは、サノスEは平行世界を認識していないというもの。サノスEは、未来の自分が達成したことを帳消しにされてしまう前に邪魔しておきべきだと認識している。アベンジャーズA側は平行世界説を採らずとも、とにかく「タイムパラドックスは起きない」という前提で行動しているので、ネビュラAがネビュラEを殺すことにも躊躇いはない。

いずれにせよ、「念願は成就された」と思ったまま死んだサノスAが最も幸せである。幸福な豚であれ。

「タイムトラベルができる」と「タイムパラドックスは起きない」という条件が揃ったので、今後のアベンジャーズは問題が起きた時に、トニーが指パッチンした後の場面に現れて石を拝借すればよい。事情を話せば貸してくれるはずである。借りてきたらキャプテン・マーベル辺りに指パッチンしてもらえば、犠牲を出さずに万事解決となる。使い終わったら、もう一度タイムトラベルして返しに行けばよい。今後もシリーズを続けていく上で禁じ手の解決法だったと思う。