オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『アメリカン・スナイパー』

American Sniper, 132min

監督:クリント・イーストウッド 出演:ブラッドリー・クーパーシエナ・ミラー

★★★★

概要

イラク戦争に従軍した凄腕スナイパーの話。

短評

本作は、好戦的にも反戦的にも、如何様にも受け取ることができる。というよりも、戦争の両面性を描いた映画であると思う。

感想

戦場におけるクリス・カイル(ブラッドリー・クーパー)の輝かしいまでの活躍は、正に英雄と呼ぶに相応しい。スナイパーとしての圧倒的な戦績だけではなく、時には前線へ出て敵を殲滅する。彼のような英雄を格好いいと思うのは自然な感情だろう。敵のスナイパーですら格好よく(彼を射殺するシーンは少々やり過ぎ感もある)、戦場を舞台としたアクション映画としての魅力は、国威を発揚するものと考えられる。

しかし、彼が戦場から離れアメリカへ戻ると雰囲気は一転する。クリスは心ここにあらずで、妻タラ(シエナ・ミラー)の悲痛な叫びも届かない。束の間の幸せを噛みしめることもなく、頭の中は戦争のことばかりである。英雄が迎える悲しい結末を見れば、戦争の虚しさを考えずにはいられない。

如何様にも受け取ることができるが、どう受け取るかは観客次第である。本作をどのように受け取るかによって、観客は自分の戦争に対する立ち位置を浮き彫りにされる。同時に、自分がどう考えているのかについても改めて考えさせられることになる。

クリスの帰国時に、アメリカ国内の人々が戦争に対して無関心であることに憤る姿が印象的だった。本作を映画館で観た時にはそれ程印象に残らなかったのだが、『この世界の片隅に』を観た時に「彼らはどうしてこんなにも戦争に対して無関心でいられるのか」と違和感を持ったのである。その時の違和感が、本作では兵士によって表明されている。

戦場となっている場所や身内の戦争のへの関与などの違いはあるにせよ、この無関心の正体は何なのだろう。本当に戦争と無関係に生活しているだけなのかもしれないし、意識的に無関心であることで日常を守ろうとしているのかもしれない。幸いにも戦争と無関係でいられるために、本当のところは分からない。それとは別に、本当に無関心でいられるのかは疑問である。

本作でオスカーにノミネートされたブラッドリー・クーパーの身体は普段よりも二回りほど大きい。筋肉も脂肪も付いているので、序盤の髭がないシーンでは顎がぷよぷよしている。髭が生えると格好よくなる。