オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『グレイテスト・ショーマン』

The Greatest Showman, 104min

監督:マイケル・グレイシー 出演:ヒュー・ジャックマンザック・エフロン

★★★

概要

奇人変人を集めたサーカスが成功を収める話。

短評

歌と踊りはケチのつけようがない程に素晴らしい。思わず自分も踊り出したくなる。歌詞も勇気をもらえるもので感動的である。一方でストーリーの方はケチをつけ放題である。これが物語を持つ映画でなく、ミュージックビデオだったなら完璧な仕上がりだと思う。歌っているシーンだけいつまでもリピートして眺めていたいくらいである。

感想

特に気に入ったのは、P・T・バーナム(ヒュー・ジャックマン)がフィリップ・カーライル(ザック・エフロン)にオファーを掛けるバーのシーン。ミュージカル映画では現実と非現実の境界が曖昧だが、それらを繋ぐ接点となるのが現実世界の音だと思っている。かつて「なんでこいつら歌ってんだ」と無粋なことを考えていた三十郎氏のような人間をミュージカルの世界に引き込む道具が必要なのである。古典的な例だとタップダンスの足音を思い浮かべるとよい。バーのシーンでは、手拍子に加えグラスや瓶をカウンターに置く音が見事にこの役割を果たしている。バーナムとフィリップの後ろで忙しなく動き回るバーテンダーの職人芸は、二人よりも印象的である。本作では他にも冒頭の足を踏み鳴らす音や求人のビラに釘を打ち付ける音が、この機能を担っている。

音は現実と非現実を繋いでくれるが、現実の要素が非現実へと導く演出も見逃せない。典型的なのは布の使い方で、仕立て用の生地が綺麗に広がったり、洗濯ものがダンスに合わせて舞ったりすることで現実の世界を色彩豊かにしてくれる。汽車の煙を利用した幻想的な演出も素敵である。

ストーリーについて。ありがちな挫折を交えた成功譚に文句を言う気はない。ミュージカルのシーンで観客を楽しませることを目的としているのなら、それを邪魔さえしなければ問題ない。気に食わないのは、サーカスの出演者の扱いである。あれほどまでに個性豊かなメンバーを集め、はみ出し者たちの居場所を創り出したことを讃えている割に、彼らのキャラクターは全くと言ってよいほど掘り下げられない。採用・面接のシーンに映った人物以外は名前すら分からない。バーナムが彼らを排除した事件の扱いも余りにも軽い。バーナムが自分とショーのことしか考えていなかったように、映画そのものもバーナム以外に注目しない。バーナム以外に焦点が当たる希少な人物も「普通」の人々である。本作における奇人たちはフリークハウスの見世物以上の役割を与えられてない。

人気と富を得た後に名誉を求めて失敗したバーナムは、虚心坦懐に自分を見つめ直し出発点へと戻ることで再び成功を手にする。ちなみに、実際のバーナムは更なる名誉を求めて政治家になったそうである。

グレイテスト・ショーマン(オリジナル・サウンドトラック)

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  • アーティスト: ヴァリアス・アーティスト
  • 出版社/メーカー: Atlantic Records
  • 発売日: 2017/12/08
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