オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ヴェノム』

Venom, 112min

監督:ルーベン・フライシャー 出演:トム・ハーディリズ・アーメッド

★★★

概要

エイリアンと合体して戦う話。

短評

外見の禍々しさ故に「最悪」とか「残虐」とか散々な言われようなヴェノム。彼は全く悪くない。せいぜい二、三人の地球人を食べてしまっただけである。それも地球にやって来たばかりでルールを把握していないのが原因である。飼い主がしっかりと躾ければ、実に良い奴である。見た目が酷いからと言って悪玉扱いするのは差別的である。断固として抗議したい。

感想

ヴェノムは、宿主となったエディ(トム・ハーディ)の命を救う。彼の元恋人アン(ミシェル・ウィリアムズ)の命も救う。終いには同胞を裏切り、地球の命運も救う。悪どころか救世主である。それだけでなく、元恋人にちゃんと謝罪するように促す良い友人ですらある(人間社会を熟知し過ぎていると思う)。

ヴェノムの禍々しいビジュアルは、他のヒーローにはない絶対的な魅力である。一方で、エディの人間的な部分とヴェノムのエイリアン的な部分が対立しないので、行動は普通のヒーローと変わりない。ネチョネチョとした細胞組織の変形以外は、アクションの種類も普通としか言いようがない。

突っ込みどころの多いストーリーである。一つは、ドーラがエディを研究所に連れ込んだ時に、彼らは監視カメラに映っているはずという当たり前の事実が無視される。一つは、シンビオートが適合せず宿主を死に至らしめていたのに、エディには何の説明もなく適合する。エディへの寄生以降は、誰にでも簡単に適合するようになる。これにも何の説明もない。一つは、ヴェノムの心境変化が余りにも突飛である。何の前置きもなく「地球が気に入ったから救うことにする。エディのおかげだ」とか言い出す。一つは、他のシーンでは銃撃を受けても平気なのに、囲まれてすごすごと逃げ出すシーンがある。

ヴェノムが勝手に戦ってくれるのだから、中の人はトム・ハーディみたいなタフガイでなくても構わないなと思っていたら、成り行きで戦うことになったライオットに「良い宿主を選んだな」と褒められる。一応関係があるらしい。宿主の性別によって外見が変化することは分かったが、能力への影響はまるで説明がない。何かと説明的になっても面白くないが、流石に雑である。

穴だらけのお粗末な脚本によりつまらない映画になりそうなところを、ヴェノムの異形のビジュアルとトム・ハーディの魅力だけで何とか持ちこたえている印象である。

シリーズの導入編としてあからさまに続編ありきで製作されている。ヴェノムを紹介するだけで物語が終わり、敵との戦いも取って付けたような印象が残る。一作目からエディがヴェノムを飼い慣らしてしまったので、続編では弱点である音と火による対策をされて窮地に陥るが二人が協力して乗り切るという展開が予想される。ビジュアルの魅力に反して物語が広がる余地が小さそうである。この予想が裏切られますように。

本編終了後に『スパイダーマン:スパイダーバース』の映像が一部流れる。三十郎氏は鑑賞済みなので全く関係ないと知っているが、劇場で観ていたら随分と戸惑ったことだろう。普通に予告編を流せばいいのに。

ヴェノム (字幕版)

ヴェノム (字幕版)