オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『夜明けの祈り』

Les Innocentes(The Innocents), 115min

監督:アンヌ・フォンテーヌ 出演:ルー・ドゥ・ラージュ、アガタ・ブゼク

★★★

概要

ソ連兵にレイプされて妊娠した修道女たちと女性医師の話。

短評

蛮行を働いたソ連兵たちは問答無用で唾棄すべき鬼畜であるが、更に業が深いのは修道院の院長である。

感想

一人のシスターにより修道院へと連れてこられた医師マチルドの提案を院長は宗教上の理由で撥ね付ける。そんな悠長なことを言っている場合かと反感を抱くが、修道院からの帰り道にマチルドがソ連兵にレイプされかける場面を見せられ、悲惨な体験への同情が強まる。しかし、ここでの同情もその後の院長の行動により全て吹き飛ぶ。

院長が守ろうとしたのは、信仰やシスター、修道院ではなく自らの権威と秩序に過ぎない。それを正しい行いだと信じているところに、彼女の業の深さがある。神の名前を振りかざして主張を通そうとする人間ほど信用出来ないものはない。

シスターたちの悲惨な体験や葛藤は神の沈黙を思わせるが、印象的なのは人間の光と闇だった。

愚かにも修道院のルールを貫こうとして命を奪った院長とは対称的に、マチルドは赤十字のルールを破ってシスターや赤ん坊の命を救う。目の前の命を大切に思う気持ちこそが希望である。

そもそもマリアが処女懐胎したなんてとんでもないこと言い出さなければ、そしてヨセフが信じたりしなければ、こんな教義もなかったろうに。

夜明けの祈り [DVD]

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