オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『キューブ』

Cube, 90min

監督:ヴィンチェンゾ・ナタリ 出演:ニコール・デ・ボア、アンドリュー・ミラー

★★★★

概要

立方体地獄から脱出する話。

短評

言わずと知れた低予算映画界の至宝である。半無限に続く立方体からの脱出劇や、ワイヤーによる肉片細切れ攻撃は、後世の作品にも大きな影響を与えた(『四畳半神話大系』の元ネタも本作ではないかと思うが、SF小説等に更なる元ネタがあったりするのか)。その功績も大きい反面、数多のタイトル詐欺や駄作を産み出した罪深い映画でもある。

感想

特筆すべきは、舞台のアイディアとそこに施された仕掛けである。ワイヤー、ガスバーナー、アシッドアタック。いずれも一度見れば忘れられない強烈な印象を残す。部屋の見せ方には二種類の錯覚が潜んでいる。照明の色を変えることで、いくつも違う部屋があるように錯覚させる。しかし、色の数は限られていて、ちゃんと進んでいるのか分からなくなるようにも錯覚させる。一つのセットから地獄的迷宮の奥行きを感じさせる。

キューブの謎解きを主に担うのは、数学を専攻する学生レブンである。皆が協力している時には、彼女以外要らないんじゃないかというくらいに八面六臂の活躍を見せるが、仲間割れが始まると警察官であるクエンティンの暴力の前には無力である。非ゼロ和ゲームなのに、合理的に行動できない(協調できない)原因は疑念にある。互いを疑うよりも信じて行動する方が、それぞれ長所を活かして皆の得になる。20年前の映画にしては、随分と現代的な視座がある。

素数や因数の描写がいい加減だったり、立方体が詰まってたら移動させられないだろうといったツッコミどころはあるが、勢いで乗り切ることが重要である。序盤で因数分解をしたレブンが終盤ではできないと言い出すのどういうことかと思うが、レブン一人で解決してしまえばカザンは必要なくなってしまう。彼がいなければ、人間同士の醜い争いに参加しない無垢な者が生き残るラストもなくなってしまう。

本作には、「キューブから脱出できるのか」というサスペンスと並列して「キューブとは何なのか」という謎がある。前者は映画の物語そのものだが、後者は登場人物たちに疑念を抱かせる役割を担うものの、明らかにされない。どうしても正体や黒幕を知りたいという観客には(本作の監督ヴィンチェンゾ・ナタリが関わっていない)続編が用意されているが、謎は解決せず謎のままに語る方がよいこともある。

キューブ (字幕版)

キューブ (字幕版)