オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ホドロフスキーのDUNE』

Jodorowsky's DUNE, 90min

監督:フランク・パヴィッチ 出演:アレハンドロ・ホドロフスキー、ミシェル・セドゥ

★★★★

概要

ホドロフスキーによる幻のSF超大作『デューン』製作断念の顛末。

あらすじ

映画史上最も有名な完成しなかった映画『DUNE』。『エル・トポ』や『ホーリー・マウンテン』といったカルト映画を監督したアレハンドロ・ホドロフスキーにより製作が進められるが、最終的にはスタジオに潰されてしまう。

感想

製作開始の時点で、ホドロフスキーは『デューン』を読んでいない。プロデューサーのミシェル・セドゥ(レア・セドゥの親族らしい)にどんな映画を作りたいか問われ、知人が絶賛していたという理由で『デューン』と即答する。何とも豪胆な男である。

映画の製作は、ホドロフスキーが「戦士」と呼ぶスタッフやキャストを集めるところから始まる。『エイリアン』以前の映画製作に関わったことのなかったH・R・ギーガーを見出し、キャストにはサルバドール・ダリオーソン・ウェルズミック・ジャガーを、音楽にはピンク・フロイド。恐るべき陣容である。ダリやウェルズを口説き落としたエピソードは実に愉快である。

ホドロフスキーという傑物が最高のスタッフやキャストを集めながら、何故製作を断念することになったのか。犯人は誰か。悪の帝国ディズニーである。彼らにはホドロフスキーを理解できなかった。予算の超過を理由に、ディズニーは製作中止を宣告する。インタビューを受けるホドロフスキーは、実に陽気で愉快な男であった。彼が楽しそうに『DUNE』の製作過程を語る姿を見ていると、こちらまで楽しくなった(インタビューの途中でやって来た猫を抱き上げるシーンでは思わず頬が緩んだ)。しかし、金が全てのスタジオを批判する時だけは非常な怒りが込められており、見ていて辛かった。

もし完成していたら、どんな映画だっただろう。もしかすると、突出した才能がまとまりきらず、支離滅裂で意味不明な映画になっていたかもしれない。映画の概念そのものと、その後の歴史を変えるような大傑作だったかもしれない。どんな形になっていたにせよ、観られないことが残念である。

彼のような才能が認められ、観客やスタジオの考えを改めるにはまだ時間が掛かる、と映画監督のリチャード・スタンリーは語る。しかし、ハリウッドにも意外な変化があった。ネット配信サービスの登場である。大手スタジオが製作を途中で止めた企画をNetflixが買い取り、オリジナル作品として配信していることはよく知られている。マーティン・スコセッシの新作『アイリッシュマン』も、予算超過からスタジオが手放した企画をNetflixが買い取り完成にこぎつけた。『DUNE』の時代に、このような救世主がいれば…と思わずにはいられない。映画館で観られないのは残念と言うよりも絶望に近いが、クリエイターの自由な活動を後押ししているのは確かである。

ホドロフスキーは、原作のある企画を映画化することを「原作をレイプする」と述べている。ただ原作に忠実に映像化すればいいというものではない。しかし、原作をレイプするならば、彼のように愛を持って、作品に対する全責任を負う覚悟が必要である。

未完の大作と言えば、本作と同じく製作断念の経緯を映画化したドキュメンタリー『ロスト・イン・ラ・マンチャ』を思い出す。テリー・ギリアムによる『ドン・キホーテ』の映画化である。『ロスト・イン・ラ・マンチャ』の公開が2002年。なんとテリー・ギリアムは『ドン・キホーテを殺した男』という映画を完成させ、アメリカでは今月公開だという。ホドロフスキー、御年90歳、まだチャンスはあるか。