オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『女王陛下のお気に入り』

The Favourite, 119min

監督:ヨルゴス・ランティモス 出演:エマ・ストーンオリヴィア・コールマン

他:アカデミー賞主演女優賞オリヴィア・コールマン

★★★★

概要

没落貴族の娘が成り上がる話。

短評

ヨルゴス・ランティモスというのは、奇怪な映画を撮る監督である。だいたいヨルゴス・ランティモスなんて名前からして分かりづらい。世界史の教科書に登場すれば、マルクス・アウレリウス・アントニヌスに次ぐ受験生からの人気を獲得しても不思議ではない。

感想

彼の過去の作品と比べれば、本作は分かりやすく楽しい。少なくとも「独身のままだと動物に変身する」などという意味不明な設定がどういうことなのか戸惑っている内に映画が終わるなんてことはない。アン女王(オリヴィア・コールマン)の寵愛を巡ってアビゲイルエマ・ストーン)とサラ(レイチェル・ワイズ)が争うというプロットは実にシンプルである。

舞台は18世紀のイギリスだが、射程は現代にまで届く。人の愚かな営みはいつの世も変わらない。見え透いた愛想笑いにお世辞、そして舌技を武器に策謀を巡らせ権力者に取り入ろうとするアビゲイルの姿は、世のサラリーマンたちのようである。一方のアン女王は、自分を気持ちよくしてくれる言葉にだけ耳を傾け、真心からの忠告を遠ざけてしまう。世の要人たちを見るようである。

女王を意のままに操り望む全てを手に入れたかに見えたアビゲイルだが、彼女の立場は所詮女王の気持ち一つで危うくなる。我が世の春を謳歌するアビゲイルが、気分を害した女王に屈服させられる。頭を掴まれ脚を揉まされる。彼女が踏みつけたウサギの如しである。一方のアン女王も健康問題を抱え、後継者はおらず、愛する忠臣を失いジリ貧である。そんな二人の顔に、か弱いウサギたちの映像が重なって映画は幕を下ろす。

注目のエマ・ストーンのおっぱいについて。序盤にから二度に渡って見えそうで、見え…見え…見えない!シーンが続く。パッケージ版が出たらコマ送りして確認しなくてはならんと思っていたら三度目の正直、バッチリその頂を見られる。観客を焦らしておいて、女王とアビゲイルが一線を越えたところで大事な部分を見せる辺り、監督はよく分かっている。照明の関係で色が分からないのは残念だが贅沢は言うまい。

印象的なカメラワークが二つ。一つは、広角レンズによる歪曲した映像。観客に奇妙な感覚を与えることで、宮中が異様な空間であることを示したのではないかと思う(アビゲイルが宮殿に向かう馬車を捉えたシーンでも使われているので、正確ではないかもしれない)。一つは、人物の顔を映す時の見上げるようなアングル。鼻の穴が映ってアン女王がより醜悪に見える以外の意図は分からなかった。顔以外を映す時にもローアングルが多い。

痛風の激痛に苦しみトドのように唸りを上げるアン女王がとくかく醜い。同じアンでも『ローマの休日』の王女とは月とスッポンである。女王を演じたオリヴィア・コールマンアカデミー賞にノミネートされているが、受賞に相応しい名演である(受賞は功労賞的な側面もあるのでグレン・クローズだろう)。ウニやイクラを食べた時に「痛風一直線」などと冗談めかして気軽に言うが、痛風とはあんなにも苦しいものなのか。恐るべしプリン体

 

*追記

オリヴィア・コールマンが見事オスカーを獲得した。三十郎氏、流石の凡眼と言うべきである。

女王陛下のお気に入り (字幕版)
 
The Favourite (Original Motion Picture Soundtrack)

The Favourite (Original Motion Picture Soundtrack)

  • アーティスト: ヴァリアス・アーティスト
  • 出版社/メーカー: Decca (UMO) (Classics)
  • 発売日: 2019/01/07
  • メディア: MP3 ダウンロード
  • この商品を含むブログを見る