オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ファースト・マン』

First Man, 141min

監督:デイミアン・チャゼル 出演:ライアン・ゴズリングクレア・フォイ

他:アカデミー賞視覚効果賞(ポール・ランバート他)

★★★

概要

ヒトが月へ行く話。

短評

本作はアポロ計画という全人類的偉業を題材にしているが、描かれているのは計画そのものというよりもニール・アームストロングという個人である。

感想

顔のアップが多い。宇宙船の狭い空間内だけでなく、地球でも顔のアップを捉え続けている。しつこいくらいに表情を追ってきたにも関わらず、月面へ降り立つ瞬間の表情は観客には見えない。ヘルメットには反射した月面の風景が映し出されている。月に立った最初の人間は一人しかいない。観客は想像するしかない。それらの控えめな描写に反して、BGMや月面での行動は直接的かつ叙情的である。少しチグハグな印象で、どう受け取ったものか戸惑った。そこまで描くのなら、観客の想像に委ねるのではなく監督の解釈を伝えてもよいのではと思わなくもない。

エンターテインメントは放棄していると言ってもよい。月面着陸という偉業の達成感を味わう楽しい映画ではない。それがはっきりと分かるのは、正に月面着陸のシーン。アームストロングが着陸成功を伝えても、歓喜に湧くヒューストンが映るという定番の描写はない。あくまでアームストロングの姿を捉え続けるだけである。

デミアン・チャゼルの映画はいずれも「夢と代償」をモチーフにしている。アームストロングの場合、夢のために代償を払ったというよりは、失ったものを埋めるために邁進したように映る。一方で、アメリカという国がアポロ計画のために払った代償は大きい。実験の失敗によりパイロットの命を失った他、多額の予算により国民の生活を圧迫した。こちらの観点からだと、一人の男ではなく一つの国を描いた映画に思える。

特撮やセットは凄い。ジェミニ号なんて見るからにオンボロで、こんなので本当に宇宙へ行くのかと不安になる。船内では金属の軋む音が響き渡り、不安を倍増させる。アームストロングの味わった不安を追体験させる効果はあるが、当時はまだ出来たばかりできれいだったのではないか。

月面の映像は確かに美しいが、強いてIMAXで観る必要はなかったように思った。

三十郎氏の生まれる前の話なので正しいのかは分からないが、当時の様子を再現するために細部に至るまでこだわっているようだった。映画の序盤に登場するバドワイザーの缶ビールを缶切りで開けていたように記憶している。まだプルタブが開発されてなかったのだろうか。

ファースト・マン (字幕版)

ファースト・マン (字幕版)