オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ブレードランナー 2049』

Blade Runner 2049, 163min

監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ 出演:ライアン・ゴズリングハリソン・フォード、アナ・デ・アルマス

他:アカデミー賞撮影賞(ロジャー・ディーキンス)、視覚効果賞(ジョン・ネルソン他)

★★★★

概要

アンドロイドはホログラム嫁の夢を見るか?

感想

見る。三十郎氏は本人の知る限りアンドロイドではないけれど。繊細なハートを射抜かれた三十郎氏は、起きている間にジョイちゃんを夢に見過ぎて、眠ってからもジョイちゃんが夢に出てくる。寝ても起きても夢に見るのはジョイちゃんばかり。起きてジョイちゃんのことを考えているのか眠ってジョイちゃんのことを考えているのか区別がつかない。これは限りなく恋に近いどす黒い何かと呼ぶべきである。嗚呼愛しのジョイちゃん。嗚呼麗しきアナ・デ・アルマス嬢。

かつて三十郎氏は二次元嫁に夢を見た。現実世界で報われない多くの男たちと同じく、画面から決して出てこない女性に夢を見た。ラブプラスというゲームに興じてみたこともある。そんな男たちの悲しくも空費された青春の残骸がホログラム嫁を渇望している。

ホログラム嫁は実現可能なのか。実現した暁には身を粉にして働き全てを捧げる覚悟が三十郎氏にはある。その実現には二つの障壁があるだろう。一つは、高精細のホログラムという技術的障壁。ホログラムの投影装置自体は現時点でも存在するようなので、後は画質や精度、モビリティの問題である。きっと時間が解決してくれるだろう。もう一つは、AI。こちらの方が厄介に思える。人が「人である」と認識できるようなプログラムは存在しうるのか。こちらはどういうものができれば完成と言えるのか答えが見えない。

実体を持たない女性との恋については『her/世界でひとつの彼女』に詳しい。まず身体を伴わないので接触できない。我々の身体及び意識下にジョニーが存在する限り、これは致命的な問題である。ホログラム嫁の実現に高い技術が求められるのと同様に、ユーザーにも高潔な精神が求められる。精神を修養せよ。仮にそこを乗り越えられたしても、次なる課題は更に高い精神性を求める。彼女はどこにでもいる。前述『her/世界でひとつの彼女』におけるサマンサはなんと641人と同時に交際をしていた。本作でも街の中で巨大なジョイちゃんがピンクの裸体を晒している。嫉妬との戦いである。「俺のジョイは俺だけのジョイ」と言い切れるだけの愛がない軟弱者は常に心を打ち砕かれ続け、終いには心をなくすだろう。「ジョイきれい…」と虚空を見上げて呟くのである。

ホログラム嫁よりレプリカントに夢を見ないのかという疑問は無粋である。かつて二次元嫁に夢を見た者だけが、決して手の届くことのない儚さが持つ美しさを知る。肉体は欲しいが、肉体があってはだめなのだ。

アナ・デ・アルマス嬢の魅力は筆舌に尽くしがたいのでここには書けない。彼女がインスタグラムに載せている写真が余りにも素敵なのでここで紹介しておきたい。全人類は彼女にひれ伏せばいいと思う。女優のプライベートは映画にとってノイズになりうるが、そんな野暮を言っている場合ではない。三十郎氏のインスタグラムアプリは、ナショナル・ジオグラフィックによる美しい写真と美しい女性の写真の永久機関である。

 
 
 
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前作でデッカードがレイチェルにVKテストを施した後にタイレルが何気なく言った「過去を作って与えてやれば、感情も落ち着き制御も楽になる」という言葉を元に、人間性を形作るものは何かというミステリーが本作を貫くテーマである。その答えが示された時、三十郎氏の頭には新たな疑問がむくむくと湧き上がる。人間らしくあろうとするのは何故だろう。