オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『有頂天家族』森見登美彦

概要

京都に暮らす狸と天狗と人間の物語。

感想

ふはふはした毛玉に覆われた愉快な話のようでいながら、内実は血で血を洗う話である。兄弟や親族を罠にはめて殺してしまおうというのは、中世の貴族によるドロドロとした諍い事のようである。そんなドロドロとした話を愉快たらしめるのは彼らに流れる阿呆の血なのだろう。

金閣銀閣の兄弟が 「樋口一葉」の四文字熟語としての意味を説明するシーン。『山月記』における「もんどり打つ」と同じく著者が言葉遊びの技術を披露している。『森見登美彦辞典』と称して偽辞書でも出したならば、たいそう愉快な一冊になるだろう。

本作には二人のスズキが登場する。一人は、弁天こと鈴木聡美。もう一人は、淀川教授の研究室にいるスズキ君。何か関係があるのではないか。そうでなければわざわざ同じ名字のキャラクターを出さないのでは。

動物を主人公としたのは『千一夜物語』の影響があるのか。『熱帯』を読んでからは、何でも『千一夜物語』と結びつけようとしていけない。世界を見るレンズの歪んでしまった陰謀論者的である。

「どうすべきか分からないときには、何もしない方が得策だ」これは本当にナポレオンの言葉なのか。

おっぱいやそれに準ずる言葉(胸のふくらみ、乳房、乳)の登場は7回。狸の尻ばかりを愛でて宗旨替えしたのではと心配していたが、登場するキャラクターたちはおっぱいを気にしていた。

森見グルメ

菊水。単行本p.36に登場。弁天が菊水の塔を踏み台にして南座へ飛んで行く。

東華菜館 本店。単行本p.38に登場。弁天は赤玉先生を残し東華菜館を踏み台にして飛び去る。

出町ふたば。単行本p.89に登場。赤玉先生への献上品。

三嶋亭 本店。単行本p.143に登場する金曜倶楽部の会場。p.314にも登場する。

かに道楽 京都本店。単行本p.314に登場。

鳥彌三。単行本p.324に登場。

「朱硝子」「仙酔楼」「竹林亭」については、アニメ版ではモデルとなっているロケーションがあるようだ。

赤玉ポートワイン」は、現在では「赤玉スイートワイン」として販売されている。ワインとは違う飲み物だと思えば、甘くて美味しい。

有頂天家族 (幻冬舎文庫)

有頂天家族 (幻冬舎文庫)